明治安田生命の家計調査で、平均貯蓄が前年比260万円増加した一方、夫の小遣いはわずか32円の増加にとどまったことが明らかに。物価高による支出増、買い控え、NISA利用の広がりなどが背景にある。自由に使えるお金が減る中で、家計はどう変わったのか。数字には表れない“我慢と選択”の実態を探る。
貯蓄260万円増
小遣いは据え置き
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「貯蓄は増えた。でも、おこづかいは変わらない。」
そんな家庭の“静かなジレンマ”が、最新の家計調査から浮かび上がってきました。明治安田生命が実施したアンケートによると、2023年の平均貯蓄額は前年比260万円も増加したにもかかわらず、夫のおこづかいはわずか32円増にとどまり、実質的に「据え置き」となっています。収入は増えても、物価高という見えない壁に押し戻される──そんな現代の家計のリアルがにじみ出ています。
✅ 見出し | ▶ 要点 |
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平均貯蓄は260万円増 | 2023年の平均貯蓄額は前年比1563万円に到達 |
小遣いは実質据え置き | 夫の平均額は33,071円、前年比+32円 |
物価高の影響が深刻 | 食品や生活費の支出が急増、節約志向が鮮明に |
世代別収入に差異あり | 20〜50代で収入増が顕著も生活負担感は続く |
なぜ“おこづかい据え置き”が話題になったのか?
貯蓄は増えたのに、おこづかいは?
明治安田生命が2025年3月に実施した家計調査では、全国の既婚男女1,620人を対象に家計の実情が明らかにされました。
その中で注目を集めたのが、「平均貯蓄額の大幅増」と「夫のおこづかいが据え置かれた」という“ねじれ”の構造です。
平均貯蓄額は前年より260万円多い1,563万円に到達。これは賃上げや投資環境の改善、さらには物価上昇による“買い控え”が影響していると見られています。
一方で、20〜50代の夫の平均おこづかいは33,071円。前年比たったの+32円で、ほぼ横ばい。
「収入が増えても自由になるお金は増えていない」――この声が家庭の本音を物語っています。
収入増と物価高、生活者が取った選択
調査によると、20~50代の25.3%が「世帯収入が増えた」と回答し、3年連続でこの割合は上昇。
しかし96.3%が「昨年よりも物価高の影響を感じている」とも答えており、家計は引き締められたままです。
支出が「増えた」と感じている人は48.6%。特に値上がりを感じる食品は「米」(87.9%)、「野菜」(82.6%)、「卵」(53.9%)と、日常生活に直結する項目ばかりです。
つまり、収入が増えても生活コストの上昇がそれ以上に早く、可処分所得は実質減。自由に使えるお金がないなかで、貯蓄や家計を優先し、おこづかいを削る構図が見えてきます。
具体的データ比較(夫婦間・年齢別)
特に興味深いのは、夫婦間の小遣い額の差です。夫の小遣いが33,071円であるのに対し、妻の小遣いは前年比で約2,000円増加しています。
この差には「家計管理者としての役割」や「自身の消費への選択意識」など、ジェンダーを超えた経済行動の変化が潜んでいるとも考えられます。
📊平均貯蓄と小遣いの推移
項目 | 2023年 → 2024年 |
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平均貯蓄額 | 1,303万円 → 1,563万円(+260万円) |
夫のおこづかい | 33,039円 → 33,071円(+32円) |
妻のおこづかい | 約31,000円 → 約33,000円(+2,000円) |
物価高の実感(全体) | 91.1% → 96.3%(+5.2pt) |
生活者の声ににじむ“静かなやりくり”
平均的な家計では、可処分所得のほとんどが固定支出に吸い込まれ、「余ったら使う」から「余らない前提で組む」へと意識が変化しています。
SNS上でも「値上げばかりで自分の楽しみが削られていく」「夫のおこづかいがまるで“予備費”扱い」という投稿が目立ちました。
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「おこづかい=自由の象徴」が“家計の調整弁”に転落
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食品・光熱費の高騰が財布を直撃
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我慢と忍耐が“新しい標準”になりつつある
なぜ“貯蓄が増えた”のか?
収入増加の要因と世代別傾向
明治安田生命の家計調査によれば、2024年度に世帯収入が「増えた」と回答した人は、特に20〜50代の働き盛り層に集中し、全体の25.3%に及びました。
この背景には、企業のベースアップ、賞与回復、そして副業・投資による収益の複線化があると考えられます。
一方で、60代以降の層は年金収入が中心で収入の伸びは限定的。ゆえに世帯貯蓄の増加は「稼げる世代」の行動変化に左右されていることが読み取れます。
物価高による買い控え心理
収入が増えても、生活コストの高騰により出費を抑えざるを得ない現状が続いています。
調査では、96.3%の人が「昨年より物価高の影響を感じる」と回答。特に食品や日用品など、頻繁に購入するものほど負担が積み重なる傾向にあります。
その結果、「貯蓄の増加」は、積極的な計画的貯金というよりも、“使えないから結果的に残った”という実態に近いのかもしれません。
投資・NISA利用者の実態
また今回の調査で注目されたのが、NISA(少額投資非課税制度)の利用率です。
回答者のうち31.7%が「投資している」と答え、さらにその75.8%がNISAを活用しており、平均利用額は約300万円という結果に。
この数字は、特定層のリテラシーと投資意欲の高さを示す一方で、「貯める」から「増やす」へと家計行動が変化している兆しとも言えます。
🔁家計行動の変化プロセス
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収入が増える(賃上げ・副業・投資)
↓ -
物価高に直面(食品・光熱費・保険など)
↓ -
支出を見直し、買い控えが進行
↓ -
結果として貯蓄が増える
↓ -
余裕は生まれず、おこづかいは据え置きのまま
✅ 見出し | ▶ 要点 |
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収入は増えている | 特に20〜50代の働き手層に顕著な増加 |
支出は抑えられている | 物価高による“買い控え”が背景に |
投資が家計の一部に | NISA利用者は約3割、平均300万円 |
「収入が増えたのに生活が楽にならない」と感じているはずです。
この章では、“貯蓄が増えているのに自由がない”という矛盾を、生活者の感覚に寄り添って整理しています。
これからの「家計管理」に必要な視点とは?
キャッシュレス・スマホ決済の台頭
調査では「最も利用する決済手段」として、「スマホ決済」が28.1%と「現金」(25.6%)を初めて上回りました。
キャッシュレス化の浸透は、管理のしやすさと利便性だけでなく、“使っている感覚”を希薄化させるリスクもはらみます。
つまり、今後の家計管理では「可視化された支出」と「予算感覚の維持」が重要になります。
収支感覚の“アップデート”が鍵
小遣いを含めた“自由に使えるお金”の設計には、従来の「余剰ベース」ではなく、「優先順位ベース」の視点が求められます。
「何に使うか」ではなく、「なぜ今は使わないか」を意識することが、新しい家計感覚の出発点となります。
生活防衛と自己投資のバランス
NISAや副業によって「増やす努力」は確実に広がっていますが、それでも物価高という外圧は続きます。
これからの時代、家計とは「守る」と「攻める」を同時に実行する“家計ハイブリッド戦略”が必須になるでしょう。
🧠「自由になるお金」の正体を問い直す
私たちは「収入が増えれば生活が楽になる」と信じてきた。しかし現実には、そう簡単にはいかない。
数字上は貯蓄が増えている。だが、心が感じているのは“余裕のなさ”だ。
おこづかいが増えない。そんな些細な話に見えて、実は深い意味がある。
それは「誰が家計の重みを引き受けているか」という、家庭内での見えない力学の象徴だ。
節約志向が家庭を覆う今、私たちは問われている。
お金があるのに自由がない世界を、果たして“豊か”と呼べるのだろうか。
❓FAQ
Q1. なぜ夫のおこづかいだけが据え置かれているの?
A1. 家計全体の節約志向の中で「夫の小遣い」は最も調整しやすい項目とされやすく、自由裁量の縮小が影響しています。
Q2. 平均貯蓄が大きく増えた要因は?
A2. 賃上げや副業に加えて、物価高による買い控え、NISAなどの投資への移行が主因と見られます。
Q3. 妻のおこづかいが増えた理由は?
A3. 増額傾向の背景には「家庭内での役割意識」や「生活コストの再配分」があると推測されます。
Q4. 今後のお金の使い方で重要になる視点は?
A4. キャッシュレス時代の支出可視化と、自由度よりも目的性を重視した「自己投資・生活防衛」の視点が鍵です。