K-POPが“韓国を離れる!?”
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🇰🇷K-POPが韓国を離れる日:「BTS観たさに日本へ」拡大する空白と経済流出
「BTSを観るために日本へ行く」。かつては信じがたいこの現象が、今のK-POPファンの現実となっている。韓国発の音楽コンテンツが世界規模で影響力を持つ一方で、その拠点である韓国には“受け皿”が存在しないという矛盾が、深刻な空洞化を招いている。BTSやSEVENTEENといった人気アーティストは日本を含む海外ドームでの大規模公演を続けるが、本国では開催の機会すら限られている。背景には、長年放置されてきた公演インフラの欠如と、それに伴う経済機会の逸失がある。
【冒頭要約表】
公演インフラの欠如が突きつけた“本拠地不在”の現実
2025年現在、韓国国内で4万人以上の観客を収容できる常設公演施設は、ソウルの蚕室総合運動場のみとされている。しかしこの施設も2027年以降に大規模な改修工事が予定されており、使用不能となる見通しが報じられている。次点となるソウルワールドカップ競技場はサッカー専用で、音響設備や視認性に課題が残る。
唯一のドーム型施設である高尺スカイドームは、最大収容が2万2000人と小規模にとどまり、野球シーズンとの兼ね合いで使用可能な時期も限られている。国内のイベント業界では「収容能力と開催安定性の両立ができる会場がない」という声が強まっており、韓国音楽公演産業協会も2024年末にソウル市を対象とした署名活動を実施した。
SEVENTEENも日本を選ぶ:都市そのものを“ライブ空間”に
2023年にSEVENTEENが行った日本5都市でのスタジアムツアーは、合計33万人を動員。都市全体をライブイベントと連動させる「THE CITY」構想では、スタンプラリーやブランドコラボ、限定商品企画などが自治体や民間企業と連携して展開され、街ぐるみでK-POPを体験できる空間が実現された。
このような都市スケールのツアーが日本で成功している一方、韓国では制度・土地・予算・住民合意のいずれも整わず、実現例はない。HYBEやCJ ENMといったエンターテインメント企業は、安定して開催可能な環境を求めて国外ドームに拠点を移しつつある。
東京ドームに流れるK-POP資源:MAMA AWARDSの象徴性
CJ ENMが主催する「MAMA AWARDS」は2023年・2024年に連続して東京ドームで開催され、2日間で計9万人を動員。現地の経済効果は1300億ウォン相当とされており、本来なら韓国国内にもたらされたはずの消費が、日本側に流れた形となった。
韓国文化観光研究院の試算によれば、BTSの「MAP OF THE SOUL」ワールドツアーが予定通り実施されていれば、国内に最大4兆ウォンの経済効果をもたらした可能性があるとされる。観光・宿泊・交通・物販などを含む波及効果は極めて大きく、公演の場を失うことが、韓国全体の観光政策にも影響を与えている。
「THE CITY」モデルが拓く都市観光ビジネスの未来
SEVENTEENが展開した「THE CITY」プロジェクトは、公演当日だけでなく、都市そのものをK-POPテーマパークとして機能させるという次世代モデルを提示した。東京・名古屋・大阪などの自治体と提携し、街中での体験型スタンプラリーや期間限定カフェ、空港広告ジャックなどを組み合わせ、観光地化が図られた。
こうした構想は韓国国内でも企画されたが、土地の用途制限や騒音問題、行政手続きの煩雑さなどにより実現には至っていない。ファンの消費行動を可視化・立体化するモデルとして、アジアの中でも日本がK-POPの“体験拠点”として再定義されつつある。
公演インフラ:日韓比較(2025年時点)
項目 | 韓国 | 日本 |
---|---|---|
3万人超の常設ドーム数 | 0(高尺Dome:2.2万人規模) | 5(東京・大阪・名古屋・福岡・札幌) |
音楽特化型施設数(1万席以上) | 3未満(すべて体育館系) | 40以上(武道館・アリーナ等) |
世界ツアー対応可否 | 極めて困難 | 全都市で可能 |
インバウンド連携 | 制度・予算未整備 | 空港連動・ツアー整備あり |
政策対応状況 | 建設は構想段階・進捗不透明 | 各自治体主導で整備・誘致進行中 |
※出典:朝日・日経・東洋経済・韓国観光研究院報告より再編
❓FAQ|K-POP公演とインフラ問題に関する5つの疑問
Q1. なぜ韓国ではK-POP公演が少ないのですか?
A. 大規模な音楽専用施設が極端に少なく、観客数を収容できる公演場がほぼ存在しないためです。
Q2. 韓国にもドームはあるのでは?
A. 高尺スカイドームがありますが、収容2万2000人と規模が小さく、使用可能時期が限定されています。
Q3. BTSやSEVENTEENが日本を選ぶ理由は何ですか?
A. 日本には5万人規模のドーム型会場が複数存在し、公演運営が安定しているためです。
Q4. 公演に伴う経済効果はどの程度ですか?
A. MAMA AWARDSでは2日間で1300億ウォンの効果が確認され、BTSのツアーでは4兆ウォン規模の試算もあります。
Q5. 韓国政府はどんな対応をしていますか?
A. 公演施設の新設が大統領公約に含まれていますが、具体的な建設計画や着工には至っていません。
まとめ
“本拠地なきK-POP”が突きつける観光産業の盲点
韓国発のK-POPが世界を席巻するなか、その起点となる韓国内には、観客数と演出水準に対応できる公演施設が決定的に欠けている。これは単なる施設の不足ではなく、文化政策と都市設計の遅れを反映した構造的問題である。
SEVENTEENの「THE CITY」ツアーやMAMA AWARDSの東京開催が象徴するように、K-POPは今やコンサートを超えた都市観光・産業活性の起爆剤となっている。にもかかわらず、韓国は自国内でその機会を十分に創出できておらず、経済的恩恵の多くを国外に委ねている。
文化体育観光省が施設整備に言及し、イ・ジェミョン大統領の公約にも反映されたことは一歩前進といえる。ただし、今後の焦点は“いつ整備されるか”に移る。グローバル市場で韓国がその文化資産を最大限に活かすには、「K-POPをどこで聴くか」という選択肢を、本国に取り戻す必要がある。