日産自動車が米国の事務系部門とキャントン工場を対象に、追加の早期退職募集を開始。業績連動型賃金の引き上げも今年度は世界規模で凍結へ。2万人規模の削減計画と再建への戦略的施策について、社内メールと株主資料から詳細を読み解く。
日産2万人削減
追加早期退職
広告の下に記事の続きがあります。ペコリ
日産が米国で追加退職を募集、給与凍結も再建の一手に
見出し | 要点 |
---|---|
再建加速 | 日産が計2万人削減へ方針転換 |
米国対応 | キャントン工場などで追加退職募集開始 |
賃金凍結 | 今年度の業績連動給与を世界で凍結 |
国内影響 | 追浜・湘南工場にも再編圧力が及ぶ可能性 |
2025年5月、日産自動車が米国の工場および事務系従業員を対象に、追加の早期退職募集を開始したことが明らかになった。あわせて、2025年度の業績連動型給与の支払いを凍結する内部文書も確認された。これはすでに発表されていた9,000人規模の人員削減計画を、世界全体で2万人規模に拡大する一環であり、経営再建の加速を示している。
日産は近年、電動化戦略の立て直しと販売低迷を受け、再建方針を強めていたが、今回の動きはその具体的な実行段階に入ったことを意味する。対象は主に米国のキャントン工場と、企画・IT・人事・財務部門などの事務系社員とされ、国内の拠点にも影響が及ぶ可能性がある。
イバン・エスピノーサ社長は「この再編は将来に向けた持続的な競争力強化のため不可欠」と社内向けにコメントしており、従業員向けの説明メールには「会社の将来を守るための前向きな措置」と記されている。
なぜ日産は追加の早期退職を実施したのか?
日産は2024年時点で、全世界で9,000人規模の人員削減を進めていたが、2025年5月、方針を変更し2万人規模へ拡大する内部文書が判明した。この背景には、為替効果に依存しない収益構造の確立と、北米販売の伸び悩みがある。
とくに今回の早期退職募集は、米国ミシシッピ州のキャントン工場およびナッシュビル拠点の事務系職員に対して実施されている。対象者には退職金上乗せなどの条件が提示されており、任意参加のかたちをとっているが、実質的には整理圧力と受け止められている。
また、2024年11月に通知された前回の早期退職とは異なり、今回は新たな対象者・新たな日程での実施となる。内部文書によると、2025年7月末までに一定数の退職希望者を募るとしている。
どの部門と地域が対象となっているのか?
対象は現場の製造ラインだけでなく、経営・財務・企画などの中核的な事務系部署にも及ぶ。この広範な対象範囲は、単なるコストカット以上の構造的変化を伴っている。
具体的には、日産ノースアメリカ本社(テネシー州)とキャントン工場で勤務する3000人規模の社員が対象となり、一部の部署では再配置も同時に進められている。
前回の通知内容と今回の変更点
2024年発表 | 2025年5月発表 |
---|---|
9,000人削減 | 合計2万人へ拡大 |
北米3工場 | キャントン工場+米事務系を対象に追加募集 |
工場閉鎖未定 | 完成車工場7カ所閉鎖を明言 |
賃金動向不明 | 業績連動給与を世界的に凍結 |
人材再構成の全体像とリスク
今回の動きは、日産のグローバル経営戦略の一環として位置付けられている。再建の中核は「選択と集中」であり、人件費の抑制だけでなく、老朽化した工場の整理・統合も含まれている。
退職金の水準や条件にはある程度の柔軟性があり、対象者の合意を得る形式ではあるが、「実質的な人減らし」との批判も社内外で広がっている。
-
イバン社長が構造改革を主導
-
工場の再編と人件費圧縮を両輪で進行
-
対象者には年齢・役職を問わず提示あり
米国内でどのような影響が広がっているのか?
キャントン工場では、早期退職の第二弾が発表され、従業員の間に動揺が広がっている。特に現地では、近隣地域の経済と工場雇用が強く結びついており、「リストラではなく未来投資」との経営の主張とは裏腹に、不安が募っている。
日産アメリカズの広報は、今回の措置を「限定的かつ戦略的な組織見直し」と説明し、今後も必要に応じて調整を続けるとしている。
給与凍結はどのような影響を及ぼしているのか?
今回特に注目されたのが、グローバル全体での「業績連動給与」の支払い停止だ。これは2025年度に適用され、評価に応じたボーナス支給を凍結するという内容。日産にとっては“業績悪化の自白”とも言える内容であり、労働組合からも懸念の声が上がっている。
社内文書では「過渡的な措置」としているが、回復見通しの不透明さから恒常化する可能性も指摘されている。
早期退職と給与凍結の流れ
-
売上鈍化/円安依存強まる
↓ -
利益改善の限界
↓ -
グローバル構造改革の必要
↓ -
米国で再編→給与凍結→工場見直しへ
見出し | 要点 |
---|---|
影響範囲 | 米国だけでなく国内工場にも波及の兆し |
経営判断 | 再建策として給与凍結と退職募集を選択 |
メッセージ | 経営陣は「必要不可欠な施策」と明言 |
今後注目点 | 国内早期退職の規模と工場再編の行方 |
今回の再建策は、単なる数値上の調整ではなく、企業の本質を問う局面に来ている。地域経済や労働者への配慮を欠けば、信頼は一気に失われかねない。
日産の今後の再建策と国内への波及は?
再建策の一環として、日本国内にある追浜工場や湘南工場も整理対象に含まれる可能性が報じられている。とくに湘南工場は既に生産機能の一部が停止しており、再編圧力が強まっている。
また、早期退職制度の国内実施も検討段階に入っており、2025年度中に募集が始まる見込みだ。退職金の水準や条件は未確定であるが、対象年齢の幅を広げる案も浮上している。
現場の声と経営判断は一致しているのか?
退職勧告に応じる社員が一定数存在する一方、「不透明な方針」「説明不足」との声も多い。再建には現場の納得が不可欠であり、企業としての説明責任が問われている。
他の大手自動車メーカーが業績連動給与を継続する中、日産の決定は異例であり、株主にも不安が広がっている。
企業の再建とは“数字”の調整ではない。そこに人生が、現場がある。合理と人情の隙間にこそ、真の経営が問われている。
見出し | 要点 |
---|---|
全体像 | 日産は計2万人の削減を掲げ再建加速中 |
主軸施策 | 米国での追加退職募集と給与凍結 |
国内影響 | 神奈川県2工場に再編圧力が拡大 |
注目点 | 再建と雇用、両立できる道はあるか? |
FAQ
-
Q1:なぜ給与引き上げが凍結されたのですか?
→ グローバル収益回復が未達のため。業績連動制の停止は異例。 -
Q2:日本国内の退職募集はいつ始まりますか?
→ 正確な時期は調査中だが、2025年度中に予定されている。 -
Q3:今回の再編で閉鎖される工場はどこですか?
→ 追浜、湘南を含む海外5工場も検討対象とされている(未確定)。