1970年の大阪万博の象徴「太陽の塔」が、ついに国の重要文化財に指定されました。吉村知事は「2025年万博中の指定は意義深い」と述べ、次は世界遺産登録を目指すと宣言。撤去予定だったこの塔が半世紀を超えて評価された背景には、芸術性と時代をつなぐ力があります。文化と都市の記憶を継ぐ価値とは――。
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1970年の大阪万博で人々の記憶に刻まれた「太陽の塔」が、ついに国の重要文化財に指定されることとなった。これは単なる文化財登録を超えた、「未来への記憶装置」としての格上げとも言える。吉村知事はこの快挙を受け、「次は世界遺産を目指す」と語り、2025年の大阪・関西万博との連動性にも強調をにじませた。万博の始まりと終わり、そして再び――時空を超えて繋がる芸術と都市のストーリーが、今あらためて注目されている。
なぜ「太陽の塔」が今、注目されたのか？
▶ 重要文化財に指定されたのはなぜ？
2025年5月、大阪府吹田市の万博記念公園にそびえる「太陽の塔」が、正式に国の重要文化財に指定される運びとなった。芸術家・岡本太郎によって制作され、1970年の日本万国博覧会（大阪万博）の象徴として設置されたこの塔は、高さ70メートルというスケールと、「過去・現在・未来」の時間軸を貫く思想性で、日本の戦後文化の象徴ともなった。
文化庁の審議では、「日本の高度経済成長期における芸術表現と社会の接続点として極めて意義深い」という意見が多く見られた。かつては万博終了後に撤去予定だったこの塔が、半世紀以上経っても「文化の記憶装置」として機能し続けている事実が、指定の決め手となった。
▶ 万博とのつながりとは？
指定が決定されたのは、まさに次なる国際イベントである「2025年大阪・関西万博」の開催を目前に控えたタイミングだった。これに対し、大阪府の吉村洋文知事は「2025年の万博中に指定されたことは非常に意義深い」とコメントしている。
1970年と2025年。55年の時を超えて2つの万博をつなぐ象徴として、「太陽の塔」はただの芸術作品ではなく、日本社会の時間軸を可視化する存在になった。市民にとっては懐かしさと誇り、行政にとっては都市政策と観光資源という複数の価値を内包する多層的な存在である。
🟪 過去と現在で変わった「太陽の塔」の評価
🔷 ▶ なぜ「レガシー」が重要なのか？
実は、太陽の塔は万博の“終わり”とともに消える運命にあった。だが、撤去を惜しむ声と、その芸術的・思想的価値に光を当てる動きによって残された。そしてそれが半世紀以上経た今、「国が守るべき文化財」として認定されたという事実は、文化レガシーがいかに“あとから評価される”ものかを示している。
吉村知事が言うように、「この万博でもレガシーを残したい」という意識は、単なるイベント消費ではなく、未来に繋ぐ都市戦略そのものである。
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太陽の塔は1970年当時、撤去予定だったが保存運動で残された。
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2025年の万博も「一過性」でなく継続性を重視する計画がある。
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レガシーとは「未来に託す記憶」であり、単なる建造物ではない。
世界遺産登録の可能性はあるのか？
▶ 世界遺産になるには何が必要？
文化財としての指定はゴールではなく、むしろスタートだ。太陽の塔を「世界遺産」に登録するには、ユネスコが定める厳しい審査基準をクリアしなければならない。まず、国が候補物件を「暫定リスト」に登録し、その上でICOMOS（国際記念物遺跡会議）の調査を経て世界遺産委員会の審査を通過する必要がある。
吉村知事は、「現在、国の推薦リストの公募は行われていないが、次の機会があれば手を挙げる」と意欲を見せた。大阪ではすでに「百舌鳥・古市古墳群」が2019年に世界文化遺産として登録されており、2件目となれば、関西圏における文化発信力はさらに強まることになる。
▶ 吉村知事の今後の戦略は？
太陽の塔が世界遺産に登録されるためには、「文化的独自性」「顕著な普遍的価値（OUV）」「保存管理体制」がそろっていることが必須だ。吉村知事は記者会見で、「太陽の塔はみなさんに愛されてきた。次はその価値を世界に伝える番だ」と述べ、自治体としての申請準備に入る意思を明言した。
これにより、今後は府と国が連携した“登録へのロードマップ”が描かれる可能性がある。1970年、世界を驚かせた芸術作品は、55年後の世界でもまた注目を集めることになるかもしれない。
ここで注目したいのは、芸術としての価値だけでなく、“時代をつなぐ装置”としての太陽の塔の役割だ。1970年、戦後の成長を象徴する存在であった塔が、いま「記憶の継承」と「国際的評価」を同時に受けようとしている。そこには、都市の物語と文化政策が交錯している。
🔄 太陽の塔が世界遺産になるまでの流れ
① 国が「太陽の塔」を世界遺産の暫定リストに追加
↓
② ユネスコへの正式推薦（文化庁が作成）
↓
③ ICOMOSによる現地調査と評価
↓
④ 世界遺産委員会での登録審議
↓
⑤ 世界遺産登録（大阪2件目の登録へ）
🖋️ 「太陽の塔の祈りは、誰の記憶に届くのか」
あの塔は、見る者に問いかけてくる。
未来とは何か。過去とは何か。そして、私たちはどこへ向かうのか。
かつて“奇抜”と評された構造物は、今や“保護すべき価値”として讃えられている。だが、それは単なる逆転ではない。評価される時期が違うだけで、塔の叫びはいつも変わらず空に向かって放たれていた。
世界遺産――それは表彰でも名誉でもなく、“人類の記憶への参加資格”だ。
太陽の塔がその資格を得る日、それは私たち自身が、自らの文化を信じる決意の日でもあるだろう。
❓ FAQ
Q1. 太陽の塔はなぜ今、重要文化財に指定されたの？
A1. 万博の象徴としての歴史的価値と、長期にわたり保存・活用されてきたことが評価されたためです。
Q2. 世界遺産になるにはどんなプロセスが必要？
A2. 国によるリスト選定、国際審査、ユネスコ登録など、複数段階の申請と審査が必要です。
Q3. 大阪にある他の世界遺産は？
A3. 「百舌鳥・古市古墳群」が2019年に登録されており、太陽の塔が登録されれば2件目となります。
Q4. 太陽の塔に今後新たな保存修復は予定されている？
A4. 現在は調査中ですが、重要文化財指定により保全体制は強化される見通しです。
