J3のFC岐阜は、元コートジボワール代表FWウィリアム・トギ選手と仮契約を交わしたものの、登録手続き完了後に連絡が途絶え、契約が破棄された経緯を公表した。選手側は一方的に破棄を通告し、ルワンダのクラブと新たに契約した可能性がある。クラブは第三者機関の調査で過失がないことを確認し、現在はFIFAへの提訴も視野に入れて対応を検討している。
FC岐阜、仮契約破棄で提訴検討
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外国籍選手との仮契約が成立しながら、その後の連絡断絶により破談に至った事例がJリーグで発生した。J3所属のFC岐阜は、元コートジボワール代表FWウィリアム・トギとの契約をめぐる経緯を公表し、選手側の一方的な契約破棄と他クラブとの重複契約の可能性を指摘。国際的な契約秩序の在り方が問われる事態となっている。
FC岐阜 × 仮契約破棄トラブルの全体
仮契約と加入合意の経緯
FC岐阜は2025年4月20日、ウィリアム・トギ選手と仮契約を締結した。選手本人からも加入に同意する公式コメントを受領し、クラブ側は在留資格の取得およびJリーグへの登録手続きに着手。6月初旬までに、トギ選手の日本国内でのプレーに必要な手続きはすべて完了していた。
クラブによれば、残すは正式契約書への署名のみという段階にまで進んでおり、登録準備も整っていたという。事務的手続きは完了していたにもかかわらず、進行が突然停止する事態となった。
連絡断絶と調査対応
事態が急変したのは、正式署名を控えた6月上旬のことだった。クラブによると、この時期を境にトギ側との連絡が突如途絶え、代理人との接触も一切不可能となった。メッセージや連絡要請にも返答はなく、FC岐阜は選手側の意思確認すら困難な状態に陥った。
この異常な状況を受けて、クラブは日本サッカー協会(JFA)と連携し、契約進行過程の妥当性を検証。6月中旬には外部の第三者機関が調査に着手し、クラブ側の契約手続きや交渉において過失や不正は確認されなかったとする結果を公表した。
契約破棄通知と他クラブ合意の情報
6月末、クラブの公式窓口に対してトギ選手の代理人から契約破棄の意向が文書で通知された。その中では、岐阜側の対応についての具体的な問題点の指摘はなく、一方的な解消の意思のみが明記されていた。
さらに同時期、アフリカ・ルワンダのクラブとの契約合意報道が現地メディアを通じて確認され、FC岐阜は「二重契約の可能性」を含めて事実関係を確認中であると発表。現時点で代理人からの公式説明は得られておらず、クラブはFIFAへの提訴を含めた法的措置を視野に入れている。
仮契約~契約破棄までの時系列
FIFA規定と今後の対応
FC岐阜は今回の事案について、現時点でトギ側からの明確な説明がないことを踏まえ、選手側または代理人による契約義務の不履行の可能性を指摘している。とりわけ、ルワンダのクラブとの契約が事実であった場合、国際サッカー連盟(FIFA)の移籍規定第18条に抵触する恐れがあると判断している。
この規定は、選手が複数のクラブと同時に契約する「二重契約」を禁止しており、違反が確認された場合、関係者には出場停止や金銭的制裁などの処分が科される。クラブは現在、代理人に正式な説明を求めるとともに、FIFAへの提訴も視野に入れて対応を検討している。
信義違反か、制度不備か
今回のように仮契約段階で選手との合意が成立していた場合でも、正式契約前であることを理由に契約責任が軽視されるケースは少なくない。しかし、クラブ側が日本での在留資格申請や登録準備をすべて終え、本人も加入意思を明言していた以上、形式的な署名の有無を超えて「合意形成」があったと認定される可能性もある。
選手または代理人による一方的な連絡断絶と、他クラブとの契約成立が並行していた場合には、「信義違反」として国際移籍の秩序を揺るがす行為と見なされる余地がある。今後、仮契約段階での拘束力や通報制度の整備が求められる。
FIFA規定と契約段階の照合表
契約段階 | 意思表示の有無 | 登録申請 | FIFA拘束力 | コメント |
---|---|---|---|---|
非公式交渉 | 未確認 | 無 | 無効 | 法的拘束なし |
仮契約 | 文書合意あり | 無 | 条件付きで有効 | 紛争時に証拠採用の可能性 |
正式契約(署名) | 確定 | 登録準備中 | 有効 | 出場資格に直結 |
登録完了 | 確定 | 完了 | 完全有効 | 出場・移籍・報酬全体に効力発生 |
国際契約とJクラブの管理体制
仮契約のように法的拘束力が曖昧な段階であっても、Jクラブ側は外国籍選手に関して入国・登録・通訳手配・住居の下見など、実質的に多くの準備作業を並行して行っている。今回のFC岐阜のケースでは、そのすべてが選手側の一方的な連絡断絶によって損なわれた。
今後は「正式契約のみを前提とする対応」ではなく、仮契約段階での証明書・報告体制・国際通報ルートなど、制度的な整備が求められる。国内の中下位クラブでも、FIFA準拠の契約リスク管理を備える必要があることを示す事例となった。
契約進行と逸脱発覚
[仮契約締結]
↓
[加入意思コメント受領]
↓
[在留資格・登録準備完了]
↓
[選手側と音信不通]
↓
[破棄通知受領] → [第三者機関調査(岐阜側過失なし)]
↓
[他クラブとの契約報道]
↓
[FIFAへの対応検討(訴訟含む)]
FAQ
Q1. 仮契約は正式契約と同じ効力を持つのか?
A1. 条件によって異なるが、双方の署名と明示された合意内容があれば、法的に拘束力を持つ場合がある。
Q2. なぜFIFA提訴が検討されているのか?
A2. 二重契約や説明放棄が確認された場合、FIFA移籍規定に違反する可能性があるため。
Q3. クラブに損失はあったのか?
A3. 金銭的損害は発生していないが、戦力計画や国際信頼の面で損失があったとされる。
Q4. トギ側からの説明はあったのか?
A4. 契約破棄の通知はあったが、詳細な説明や謝罪は現在までに届いていない。
Q5. 今後、同様のトラブルを防ぐには?
A5. 仮契約段階での通報制度整備、FIFAとの連携強化、国際契約の証拠保全体制が必要とされる。
まとめ
国際的な契約社会において、仮契約の意味は形式だけでなく、信頼の前提を成す行為である。今回のFC岐阜とトギ選手の事例では、正式署名の前段階であっても、合意内容と行動が契約責任を担うに値することが明らかになった。
Jクラブの立場から見れば、制度の境界に依存せず、誠実な交渉と確認手続きを積み上げていた姿勢が浮き彫りになっている。だからこそ、その信義を一方的に断絶されたことの重みは小さくない。国際契約の信頼秩序を守るために、制度と倫理の両面から、再発防止への道筋が求められている。