メルカリが初の「透明性レポート」を公開。トラブル遭遇率は0.4%に低下し、パスキー登録は1,047万を突破。鑑定サービスや商品回収センターの成果も詳しく解説。
メルカリ初の透明性レポート公開
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メルカリは2025年9月1日、利用者の安心安全な取引環境を可視化する「安心安全の取り組み方針に関する透明性レポート」を初めて公開した。トラブル遭遇率は0.4%に低下し、本人確認済取引割合は76%、パスキー登録数は1,047万件に到達するなど、具体的な成果が示された。
項目 | 公表値(2025上期) | 前期比 |
---|---|---|
トラブル遭遇率 | 0.4% | −0.16pt |
本人確認済取引割合 | 76% | +8pt |
パスキー登録数 | 1,047万 | 初の1,000万突破 |
あんしん鑑定設定点数 | 36万点 | 15万→36万(約2.4倍) |
商品回収センター効果 | 補償割合1.9倍/48時間以内93% | 新設効果 |
捜査関係照会数 | 3,799件(令状28件) | — |
メルカリ透明性レポートの要点
発表内容と主要数値の解釈
今回のレポートでは、安心安全のための「二つの約束」と「三つの取り組み」が具体的数値とともに明らかにされた。二つの約束とは、不正利用者の徹底排除と正しく利用している顧客の徹底救済である。三つの取り組みは、AIによる不正監視強化、全額補償サポートプログラムの開始、そして鑑定サービスの標準化と拡充だ。
まず、不正やトラブルの発生状況については、トラブル遭遇率が2023年下半期より0.16ポイント低下し0.4%となった。取引全体に占める割合としては極めて低い水準とされ、抑止策と補償策の両立が成果を上げている。
次に本人確認の普及である。eKYCを必須化し、フロー改善も実施した結果、本人確認済みの利用者による取引割合は76%に上昇した。前期から8ポイントの増加で、高額取引やブランド品取引における安全性が向上している。
パスキーの普及も注目点だ。パスキー登録数は2025年上半期で1,047万件となり、フィッシングによる不正利用が確認されていないことが報告された。ログインの安全性確保が数字として裏付けられた格好だ。
さらに、あんしん鑑定サービスの利用可能商品は半期で約2.4倍に増加し、36万点に達した。対象ブランドの標準化が進んだことで、鑑定を経た安全な商品がより多く流通するようになった。
商品回収センターの設立も成果を示した。利用者から商品を回収し実物を照合する仕組みにより、補償実施割合は1.9倍に増加。補償にかかる時間も短縮され、到着から補償まで48時間以内に完了する割合が93%に達している。
最後に、法執行機関との協力も報告された。2025年上半期の捜査関係事項照会対応は3,799件、令状に基づく対応は28件。法令に基づいた最小限の開示を徹底する姿勢が強調されている。
これらの数値から、メルカリは透明性を高めると同時に、安全性と利便性の両立を重視していることが明確に読み取れる。
発表文に記された対応方針
報告書には具体的な行動方針が列挙されている。不正者に対しては、AI検知で疑わしい行為を把握し、新規アカウントを中心に制限を実施。不正検知範囲の拡大により、利用制限率は12ポイント上昇したとされる。悪質なケースでは刑事事件化や民事訴訟などの厳格な責任追及も行われている。
顧客救済については、購入代金や販売利益の全額補償プログラムを拡充。商品回収センターの活用により、模倣品やすり替えトラブルにも迅速に対応できる体制が構築された。
また、インフルエンサーや有識者との連携、教授や専門家を交えた議論を通じ、マーケットプレイスの基本原則に基づく規制対象商品の見直しも進めている。マスクやアルコール、米穀や空薬莢といった取引制限の対象が公式に明示されているのはその一環だ。
前期と今期の主要指標
指標 | 2024下期 | 2025上期 | 変化 |
---|---|---|---|
トラブル遭遇率 | 0.56% | 0.4% | −0.16pt |
本人確認済取引割合 | 68% | 76% | +8pt |
パスキー登録数 | 約900万 | 1,047万 | +147万 |
鑑定サービス対象商品 | 15万点 | 36万点 | 約2.4倍 |
商品回収補償 | — | 補償割合1.9倍/48時間以内93% | 新制度効果 |
技術と運用の変化
AI検知・鑑定・回収センターの効果検証
今回のレポートで最も技術的な進展が示されたのは、不正検知の高度化と鑑定・回収体制の強化である。AIによる行動監視は新規アカウントの異常な取引やアクセスを検知する範囲が拡大され、利用制限率が12ポイント上昇したと明記されている。これは不正利用の未然防止に直結しており、刑事事件化や民事訴訟につながるケースも報告されている。
また、パスキーの普及は顕著である。生体認証を用いたログイン方式を導入したアカウントでは、フィッシングによる不正利用が確認されていない。登録者数は2025年上半期に1,047万に達し、主要ログイン手段として定着しつつある。
鑑定サービスの拡充も重要だ。2024年3月から開始された「あんしん鑑定サービス」は、半年で対象商品数が約2.4倍に増加し、36万点に達した。さらに今秋には「メルカリ鑑定センター」が設立予定であり、偽ブランド品対策の強化が進むとみられる。
商品回収センターの運用も効果を示した。模倣品やすり替えトラブル時に商品を回収して照合することで補償が迅速化され、補償実施の割合は1.9倍に増加。商品到着から補償までの時間は16時間短縮され、48時間以内の補償完了率は93%に達した。
公表後の変化と関係者の反応
レポート公開後、ユーザーからは安心感が高まったとの声が寄せられている。一方で、AIの誤検知によって正常な利用者が制限を受ける可能性や、鑑定基準の透明性不足を懸念する意見もある。今後の課題としては、誤検知率や鑑定の合格基準など、さらに細かな数値の開示が求められる。
事業者側としては、不正排除の強化と同時に、正常ユーザーが不利益を被らない救済策を示す必要がある。補償スピードの改善や透明性レポートの定期化は、その第一歩と評価できる。
ユーザーが押さえるべき注意点
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高額取引を行う際には必ず本人確認を済ませておくこと。eKYCの完了済みアカウントは安全性が高まっている。
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ログイン時はパスキーを登録することで、フィッシングリスクを大幅に低減できる。
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ブランド品購入時は、あんしん鑑定サービスを積極的に活用し、鑑定済み商品のみを選択することが望ましい。
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トラブル発生時には商品回収センターを経由した補償が受けられるため、速やかに申告手続きを行うことが重要である。
ステップ | 内容 | 補足 |
---|---|---|
1 | 利用者がトラブルを申告 | 購入者・出品者の双方から可能 |
2 | 商品回収センターへ送付 | 模倣品・すり替え時に実物照合 |
3 | 専門鑑定・調査 | 鑑定基準に基づく合否判定 |
4 | 補償の実施 | 全額補償サポートプログラム適用 |
5 | 不正者への対応 | アカウント制限・刑事/民事手続き |
FAQ(よくある疑問)
Q1. 補償はどのように申請できますか?
A. 公式サポート窓口から申請可能で、商品回収センターを経由して補償判断が行われる。
Q2. パスキーは必ず登録しなければなりませんか?
A. 原則必須化されており、登録済みアカウントでは不正被害が報告されていない。
Q3. あんしん鑑定サービスの費用は誰が負担しますか?
A. 原則として購入者負担だが、対象ブランドや条件により異なる。
Q4. AIによる誤検知で制限された場合はどうすればいいですか?
A. サポート窓口に異議申し立てができ、調査後に制限解除される。
Q5. 捜査機関からの照会にはどのように対応していますか?
A. 法令に基づき合理性・必要性が認められた場合に限り、必要最小限の情報を開示する。
まとめ
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トラブル遭遇率は0.4%に低下し、取引環境の改善が数値で示された。
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本人確認率やパスキー普及により、取引の信頼性が高まっている。
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鑑定サービスや商品回収センターの導入で補償が迅速化された。
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捜査機関との連携や出品規制も含め、総合的な対策が進んでいる。
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今後の課題は、AI検知の精度や鑑定基準の透明性といった指標のさらなる開示である。
発表の表現と社会的受け止め方
メルカリの透明性レポートは、利用者に安心感を与えるだけでなく、プラットフォームの社会的責任を果たす姿勢を示したと評価できる。不正排除と顧客救済を同時に推進する姿勢は、市場全体の信頼性向上にも寄与する。しかし、AI検知の誤検知や鑑定の透明性といった課題は依然残されている。今後、こうした数値や基準をさらに公開していくことで、レポートの真の透明性が確立されるだろう。