厚労省と文科省の調査で、今年3月卒業の大学生の就職率は98.0%。統計開始以来初の2年連続高水準となり、「もはやコロナの影響はない」との声も。学生の行動力と企業の採用意欲が生んだこの成果は、どこまで持続可能か。今後の課題も見えてきた。
就職率98.0%
大学生に追い風続く
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コロナ禍で大きな影響を受けた大学生の就職活動は、ついに“正常化”を迎えた。2025年3月に卒業した大学生の就職率は98.0%。前年をわずかに下回ったが、統計開始以来初めて2年連続で98%台を維持し、かつての混乱を乗り越えた姿を示している。厚生労働省は「もはやコロナの影響はなくなっている」と述べ、その回復ぶりを裏付けた。
✅ 見出し | ▶ 要点 |
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就職率はどのくらい? | 大学生の就職率は98.0%、短大生は97.0% |
何が注目点? | 統計開始以来、初の2年連続98%台 |
コロナの影響は? | 厚労省は「もはや影響なし」と断言 |
今後の焦点は? | ミスマッチ防止と多様な働き方の支援強化 |
なぜ就職率が高水準を維持しているのか?
どんな傾向が続いているのか?
厚生労働省と文部科学省が発表した2025年3月卒業の大学生に関する調査によると、就職率は98.0%。前年より0.1ポイント低下したものの、2年連続で98%台を記録したのは統計開始以来初めてである。この水準は、採用市場が安定していることを強く示している。
一方で、短大生の就職率は97.0%と前年より0.4ポイント減少。全体的には高水準ながら、学歴や分野による格差も引き続き存在している。
コロナの影響は本当に消えたのか?
厚労省は「非常に高い水準が続いており、もはやコロナの影響はなくなっていると考えている」と明言した。実際に、企業の採用活動もコロナ禍前の水準に戻りつつあり、学生にとっては「売り手市場」の状態が継続している。
しかし一部では「コロナで進んだリモート面接やオンライン就活の経験が、いまも残っている」という指摘もあり、“影響ゼロ”と断定するには注意が必要だという声もある。
過去と比較してわかる“構造変化”の兆し
1996年にこの就職率の統計が始まって以来、98%台という水準は極めて珍しい。2020年から2022年にかけては、コロナの影響で企業側も新卒採用に慎重になっていたが、ここ2年は完全に潮目が変わった。
インターンシップや学内説明会の再開、学生の“情報収集力”の向上も要因のひとつとされている。さらに、地方大学でもオンラインを活用した大都市圏企業との接点が広がったことが、就職率の底上げに寄与している。
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過去最高水準が2年連続で続くのは初
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オンライン就活の経験が定着し、格差を埋めている
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学生側の早期行動と情報戦略が成果を上げている
大学生と短大生の就職率
区分 | 就職率 | 前年比 | コメント |
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大学生 | 98.0% | ▲0.1pt | 2年連続で98%台を維持(過去初) |
短大生 | 97.0% | ▲0.4pt | やや減少、業種選択や地域格差が影響か |
就職活動の構造に変化はあったのか?
どんな業界が好調だったのか?
コロナ禍以降の数年間で、特にIT・医療・介護・物流などの成長業界が新卒採用を積極化させている。人手不足が深刻な業種では、若年層の確保が最優先課題となっており、「育成を前提とした採用」のスタンスが復活している。
また、観光や小売業なども訪日客や消費回復により再拡大し、職種の選択肢はコロナ以前の水準に戻ったと見られている。
大学生はどう動いていたのか?
今年の就職活動では、学生側も戦略的に動いていた。インターンシップの早期化、情報サイトの活用、SNSを通じた企業分析など、情報戦でのスキルが向上している。
さらに「オンライン就活」が“例外”ではなく“選択肢の一つ”として定着。地方の学生が大都市圏の企業を受けるハードルが格段に下がったことが、就職率の地域格差の縮小に貢献した。
変化した“就職活動の風景”
従来の「対面・紙中心」から「オンライン・デジタル主導」へと、就職活動の様相は大きく変わった。学生たちは、志望動機を語るだけでなく、「なぜオンラインでもこの企業を選ぶのか」といった軸の深さも求められている。
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エントリーはデジタル前提、対面は“最終確認”に
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オンライン面接に対応したプレゼン・表現力が必須に
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地方学生にとっては“距離の壁”が事実上解消された
大学生の就職活動の流れ(2025年卒)
① インターンシップ参加(大学3年夏までに複数社)
↓
② 志望業界・企業を絞り、エントリー開始(秋〜冬)
↓
③ オンライン企業説明会・OB訪問(並行して実施)
↓
④ 書類選考・適性検査の提出(エントリーシート等)
↓
⑤ 一次面接〜最終面接(オンラインと対面の併用)
↓
⑥ 内定獲得・意思決定(複数企業から選択)
↓
⑦ 入社前研修・準備期間(リモート・集合型など)
✅ 見出し | ▶ 要点 |
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好調な業界は? | IT・医療・介護など成長分野の採用が活発化 |
学生の動きは? | 情報収集力やデジタル対応力が飛躍的に向上 |
就職活動の主流は? | オンライン選考と対面の併用が一般化 |
地方学生の変化は? | 距離の壁が薄れ、大都市企業へのアクセス向上 |
ここで注目したいのは、就職活動の「地理的格差」が縮まった点です。これまで都心部に住む学生が有利だった構造に、オンライン選考という新しい導線が風穴を開けました。今後の雇用構造にも影響を及ぼす可能性があります。
次に必要なのは何か?
なぜ今ミスマッチ防止が重要なのか?
就職率が高いという数字の裏側で、「就職したがすぐ辞める」ミスマッチの問題は依然として課題だ。企業が“取り急ぎ内定”を出すケース、学生側が“とにかく決めたい”と焦る空気、いずれも後悔につながりやすい。
キャリア教育の強化や、学生一人ひとりの「働く価値観」に向き合う支援が今後のテーマである。
数字の向こうにある“選択の質”
98%の就職率――それは確かに喜ぶべき数字だ。だが、そこで満足していいのだろうか?
「とりあえず就職できればいい」という思考が蔓延すれば、社会は「消耗前提の構造」に戻ってしまう。
学生が選ぶ企業。企業が選ぶ人材。そのすべてに“意味”があるか。
本質を見抜く目を育てること。選ばれる側も、選ぶ側も、互いに「なぜここで働くのか」を問う力を持たねばならない。
数字の光の陰に、見過ごされたままの問いがある。
それに答えられたとき、ようやく「98%」が誇れる数字になるのだ。
✅ 見出し | ▶ 要点 |
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就職率はどうだった? | 大学生98.0%、2年連続で98%台を維持(短大生97.0%) |
主な要因は? | コロナ影響の消失、人手不足、学生の早期行動 |
就職活動の変化は? | オンライン面接の定着、情報戦の強化 |
今後の課題は? | ミスマッチの防止と「選択の質」の向上 |
❓FAQ
Q1. 就職率が98%というのは高い水準なのですか?
A. はい、非常に高い水準です。統計開始以来初めて2年連続で98%台を記録し、安定した売り手市場を示しています。
Q2. 短大生の就職率はどうなっていますか?
A. 短大生の就職率は97.0%で、前年から0.4ポイント低下しました。引き続き高水準ではありますが、大学生との格差が見られます。
Q3. コロナの影響は本当にもうなくなったのでしょうか?
A. 厚労省は「影響はなくなった」としていますが、オンライン面接などコロナ起源の手法が今も定着しており、完全に消えたとは言い切れません。
Q4. どんな業界の採用が活発でしたか?
A. IT、医療、介護、物流など人手不足が深刻な分野での新卒採用が目立ち、就職率の向上に寄与しました。
Q5. 今後の就職支援で重視される点は何ですか?
A. 数字だけでなく、就職の“質”に注目することです。学生と企業の相互理解を深め、ミスマッチを防ぐキャリア教育が重要です。